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質量放出

 

よみ方

しつりょうほうしゅつ

英 語

(stellar)mass loss

説 明

星の表面から物質が星風として星間空間に放出される現象。太陽では、高温のコロナから太陽風として定常的な質量放出がみられ、彗星の尾の擾乱やオーロラ現象を引き起こしている。しかし質量放出率は1年に10-12太陽質量 (10-12 $M_{\odot}$ y-1)程度であり、寿命の範囲で太陽の質量を大きく変えることはない。 進化の進んだ低温度星(赤色巨星)では、より活発な質量放出がみられ、星は最終的には外層を失った白色矮星に至ると考えられている。特に漸近巨星分枝段階では質量放出率が増大し、10-4 $M_{\odot}$ y-1に達するものも現れるとみられる。これらの天体では、質量放出の結果としてつくられる星周物質による赤外線放射や、電波での分子輝線やメーザー放射が見られる。星周物質にはダストが多量に存在し、それによる放射が赤外線で観測されるほか、低温ダストによる吸収スペクトルが観測される場合もある。ミラ型変光星にみられるような脈動とダスト形成は、低温度星の質量放出と強く関係していると思われるが、低温度星の質量放出を包括的に説明できるモデルの構築には至っていない。 一方、高温度星では、ウォルフ-ライエ星に代表されるような激しい質量放出が観測されることがある。質量放出率は10-5 $M_{\odot}$ y-1、放出されるガス流の速度は1000 km s-1に達するものもある。このほか、高光度青色変光星や新星爆発のように、短期間に大きな質量放出を伴う現象もある。また、B型星のなかには輝線を放つものとしてBe型星が存在しているが、これは速い自転をもつB型星から放出されたガスが周囲に円盤をつくるために生じている現象と考えられている。惑星状星雲も参照。

2023年05月18日更新

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    高光度青色変光星の一つ、りゅうこつ座イータ星の周辺の星雲。ハッブル宇宙望遠鏡による撮像。(クレジット:NASA, ESA, and the Hubble SM4 ERO Team)。
    https://www.nasa.gov/sites/default/files/thumbnails/image/hs-2009-25-aw-full_jpg.jpg