宇宙の地平線
よみ方
うちゅうのちへいせん
英 語
cosmological horizon
説 明
地平線とは一般には、遠方を見渡したときの地表と空の接する線、すなわちある点から見渡すことのできる距離の上限を表すものであるが、宇宙論的な地平線は以下のようにいくつかの異なる種類がある。
1. 粒子の地平線(particle horizon)
宇宙開闢(かいびゃく)後のある時刻までに因果関係を持つことのできた距離の上限、すなわち光が届くことのできた距離を粒子の地平線という。通常のビッグバン宇宙論で想定されるような減速的膨張宇宙では粒子の地平線は光速に時刻を掛けた程度の値を持つ。一方インフレーション宇宙論のように加速的膨張が起こると粒子の地平線はスケール因子に比例して急激に増大する。
2. ハッブル地平線(Hubble horizon)
ハッブルパラメータの逆数で与えられる、宇宙膨張時間内に因果関係を持ちえた距離の上限、すなわち光が届いた距離がハッブル地平線(ハッブル長、ハッブル半径ともいう)である。膨張宇宙の各時代毎に起こるさまざまな現象が、どのスケールまで一様に起こり得るかを表すのがハッブル地平線である。スケール因子が時間のべき乗で増大する宇宙では、ハッブル地平線の大きさは光速に時刻を掛けた程度である。
3. 事象の地平線(event horizon)
そこより先で起こる事象は永久に観測できない、という境界面のこと。たとえばシュバルツシルトブラックホールの重力半径より内側で起こる事象は外側の観測者からは見えないので、重力半径の球面がこのブラックホール時空の事象の地平線に相当する。宇宙論の場合は、減速的膨張または収縮する宇宙には事象の地平線は存在しないが、加速膨張する宇宙では、十分遠方で起こる事象は時間が経っても見ることができないので、事象の地平線が存在する。たとえば、ド・ジッター時空では、ハッブル長以上離れた点の事象は永遠に観測できないので、各点からハッブル長離れた面が、その点に対する事象の地平線となる。これをド・ジッター地平線ともいう。粒子的地平面、地平線問題も参照。
2018年08月03日更新
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