宇宙ジェット
よみ方
うちゅうじぇっと
英 語
astrophysical jet
説 明
天体に周囲から降着するガスの一部が細く絞られて一方向または双方向に噴出するもの。ガスが細く絞り込まれる現象はコリメーション(収束)という。中心の天体の周りにはガスでできた降着円盤があると考えられている。英語の astrophysical jetを直訳すると「天体物理学的ジェット」となるが、ここでは意味の取りやすい「宇宙ジェット」としている。cosmic jetという英語が用いられることもある。
宇宙ジェットには、中心天体の違いにより、生まれたばかりの原始星からの「原始星ジェット」、天の川銀河(銀河系)内にあるX線連星系中のブラックホールなどの高密度天体から出る「系内ジェット(Galactic jet)」、活動銀河核から放出され300キロパーセク(300 kpc=100万光年)もの長さにわたって宇宙空間に伸びる「活動銀河ジェット(AGN jet)」などの種類がある(表を参照)。原始星に質量降着するときに見られる原始星ジェットは比較的低速度であるが、中性子星やブラックホールで見られるジェットは光速度に近い速度をもつとりわけ激しい現象であり、相対論的ジェットと呼ばれることもある。相対論的ジェットはブラックホールの存在証拠とされる場合が多い。
宇宙ジェットはクェーサーや電波銀河などのいわゆる活動銀河において初めて発見された。最初の発見は1918年、おとめ座銀河団の中心に位置する巨大楕円銀河 M87 からである(カーチス、リック天文台36インチ反射望遠鏡可視光画像より)。第2次世界大戦後に電波干渉計が発明されて1950年代に電波ローブ(二つ目玉電波源)が発見された。その後大型電波干渉計VLAが稼働した1970年代末頃から、電波銀河の中心と電波ローブを結ぶ銀河間空間の細い橋のように見える電波ジェットが続々発見され、巨大スケールを持つ活動銀河核ジェットの全体像が明らかになった。超光速運動も参照。
2020年09月01日更新
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