縮退圧
よみ方
しゅくたいあつ
英 語
degeneracy pressure
説 明
ある温度と密度を持つフェルミ粒子の集団において、粒子の運動エネルギー分布が、エネルギーの低い量子状態から順に埋まった分布となっていることを(完全)縮退という。この縮退が生む圧力が縮退圧である。
スピン角運動量の大きさであるスピン量子数$s$が半整数(1/2, 3/2, …)であるフェルミ粒子(電子、陽子、中性子など;素粒子の図1参照)に対しては、パウリの排他原理により、位置と運動量の位相空間で同じ場所(厳密に言えば、「位置と運動量の位相空間内で不確定性原理によって決まる領域内」)を占める同種の粒子数はスピン自由度の数(=上向き+と下向き-の2個; $s = \pm1/2$ などのように表す)しかない。このため、たとえ絶対温度が0 Kであっても全ての粒子が完全に静止することは許されず、有限な運動量を持つ粒子が存在する。このときの最大運動量を持つ粒子の運動量をフェルミ運動量といい、対応するエネルギーで表現する場合はこれをフェルミエネルギーと呼ぶ。スピン量子数が整数であるボース粒子(光子、ヒッグス粒子など)では、位相空間内で同じ場所を占める粒子数に制限がないためこの現象は起こらない。
縮退圧は温度に依存せず、密度のみによって決まる。赤色巨星の中心核や白色矮星では電子が縮退状態になっており(電子縮退)、電子の縮退圧が自己重力に抗して星を支えている。電子の縮退圧で支えられる白色矮星の質量の上限がチャンドラセカール限界質量である。また中性子星では、中性子の縮退圧が星の重力を支える要因となっている。高密度星も参照。
2025年01月27日更新
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