分子雲
よみ方
ぶんしうん
英 語
molecular cloud
説 明
星間ガスの主要な構成元素である水素が主に水素分子状態(H2ガス)で存在している星間ガス雲のこと。星間分子ガス雲あるいは星間分子雲の略称。星間ガスは水素の状態によって、電離ガス、中性原子ガス、分子ガスの3通りに分けられるが、特に、分子ガスは空間的にまとまった領域に集まっているため、地球の空に浮かぶ雲になぞらえて、この名で呼ぶ。大質量の分子雲は巨大分子雲と呼ぶ。
分子雲は3種のガスのうち最も低温で高密度である。その温度は数Kから数十K程度。密度は同じ分子雲内でも大きく異なり、102〜105 cm-3 である。対応する天体は、種々の条件に恵まれると可視光で認識されることもあり、暗黒星雲や反射星雲として知られている分子雲も多い。
分子雲の温度では水素分子は回転運動しか励起されないため、対称2原子であるH2を輝線で観測することはほぼ不可能である。そのため、混在している他の分子や塵の放射で観測するのが通例である。その中で、歴史的にも最も古く、多くの観測データが蓄積されているのが、一酸化炭素(CO)分子の回転遷移輝線、特にCO(J=1-0)輝線である。他にも、HCN(シアン化水素)、CS(硫化炭素)、NH3(アンモニア)などがよく用いられている。
それ以外にも微量ながら様々な分子が含まれていることがわかっており、地球上でも見つかっている分子もあれば、分子雲中でしか見られない変わった分子もある。その中でも近年特に注目を集めているのは有機分子である。なんらかの方法で、分子雲中で形成された有機分子が、壊れることなく、地球のような惑星の表面に到達し、それが生命の起源に関連するのではないかとの説が真剣に語られるようになってきた。
星間ガスの中でも最も密度が高い領域であるが、その中で特に高密度( n(H2)~105 cm-3 )の領域は分子雲コアと呼ばれ、その中心部から恒星が形成されると考えられている。したがって、星形成の過程を詳細に調べるためには分子雲の詳細な観測が必要であり、この分野で特に注目される天体ともいえる。特に、大質量星が形成されると周囲の分子雲の一部を電離し、電離水素領域を形成する。したがって、輝線星雲が隣接する分子雲も多い。有名な分子雲としては、オリオンA分子雲、オリオンB分子雲、おうし座分子雲、へびつかい座分子雲、パイプ星雲、いて座B2分子雲、M17分子雲などがある。
2024年03月07日更新
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