ルービン
よみ方
るーびん
英 語
Rubin, Vera C.
説 明
ベラ・ルービン(Vera Rubin; 1928-2016)はアメリカの女性天文学者。多くの渦巻銀河の平坦な回転曲線の観測によって、渦巻銀河がタークマターのハローに包まれていることを観測的に実証した。
ベラ・ルービンは1928年ペンシルベニア州フィラデルフィアで、ユダヤ系移民の両親の二人姉妹の妹として生まれた。一家は1938年にワシントンD.C.へ移り住んだ。この頃からベラは星を眺めるのが好きで天文学に興味をもった。1948年にヴァッサー大学で唯一人の天文学コース卒業生となった後、プリンストン大学で学ぶことを希望したが、当時プリンストン大学は女性の大学院生を受け入れていなかったため、コーネル大学のベーテ、ファインマンらの下で物理学を学び修士号を得た。1954年にガモフの指導の下、当時ワシントンD.C.で天文学の学位を出していた唯一の大学であったジョージタウン大学で学位を得た。
その後同大学などに職を得たが、1965年にワシントン・カーネギー協会(現在のカーネギー研究所)の地磁気研究部門(Department of Terrestrial Magnetism)のスタッフとなり、そこで装置開発者のケント・フォード(Kent Ford)と知り合い二人は長年の共同研究者となった。ルービンらは約3億光年以内にある約200銀河の観測から、この広範囲の銀河が揃って宇宙膨張からずれた特異運動をしている(ルービン-フォード効果)という論文を1976年に発表した。サンプル銀河は光度階級分類のされているものを選び、フォードらが開発したイメージチューブ(映像増倍管)付分光器で視線速度を観測した。中性水素ガスの21cm線観測から得られていた視線速度も利用した。光度階級から求められた距離に対応するハッブル流の速度と観測された視線速度の差から特異速度を求めた。この論文は大きな議論を巻き起こした。現在では使ったサンプルのバイアスによる見かけ上の運動であったとされているが、銀河の大規模な特異運動研究の嚆矢であった。
ルービンは1963年にバービッジ夫妻らとともに渦巻銀河の回転曲線の観測を始めた。1970年代終わりから80年代前半にかけて多数の渦巻銀河の外縁部までの高精度の回転曲線をイメージチューブ分光器で観測し、どの銀河の回転曲線も銀河円盤では外側に向かって減少せず、ほとんど一定速度を保つ(グラフ上で平坦である)ことを示した。これがダークマターが存在する確かな観測的証拠としてルービンの名声を不動のものとした。彼女は1996年に英国王立天文学会からゴールドメダルを授与された。女性受賞者としては1828年のキャロライン・ハーシェル(Caroline Herschel)に続く二人目であった。
彼女は、女性差別の風潮が根強くあった中で多くの苦難を乗り越えて研究を続けたことでも知られている。23才で妊娠し、子育ての中で学位論文の研究を行った。女性を受け入れていなかったパロマー天文台で初めて観測を許された女性天文学者でもある。当時パロマー天文台には女性用トイレがなかったため、彼女は扉にある男性の絵にスカートを描いて使用したというエピソードもある。アメリカの科学雑誌「Discover」は2002年にルービンを、科学において最も重要な50人の女性の1人に選んだ。
ベラ・ルービン天文台も参照。
カーネギー研究所の追悼記事:
https://carnegiescience.edu/news/vera-rubin-who-confirmed-%E2%80%9Cdark-matter%E2%80%9D-dies
2022年06月18日更新
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