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回転曲線(銀河の)

 

よみ方

かいてんきょくせん(ぎんがの)

英 語

rotation curve

説 明

円盤銀河において、銀河円盤の星やガスは銀河中心の周りを同じ方向に回転している。回転速度を銀河中心からの距離の関数として描いたものを回転曲線という。多くの円盤銀河では、回転曲線は銀河中心から剛体回転のように立ち上がって数 kpcの距離で最大値となり、その先は円盤の端までほぼ水平を保つ。回転曲線の水平な部分では、より内側にある星やガスのほうが早く一周する(差動回転)。明るい銀河ほど回転速度は大きく、天の川銀河銀河系)では 200 km s-1 程度である。銀河円盤の星の表面輝度はほぼ指数法則に従って外側ほど低下するため、もし回転速度が円盤の星の重力だけで決まっているとすると、回転速度も外側ほど小さくなるはずである。実際は、ダークマターでできた重いハロー成分(ダークマターハロー)が存在しており、回転速度は実質的にダークマターハローの重力で決まっている。ダークマターハローの質量は中心からの距離にほぼ比例するため、回転曲線が水平になる(平坦な回転曲線)。
円盤銀河が回転していることは1914年にスライファー(V.M.Slipher)によって初めて報告された。渦巻銀河の回転曲線が外側までほぼ水平であることは、1970-80年代に星生成領域の放つ電離ガスの輝線や 中性水素ガスの21cm線の観測により明らかになった。詳細な観測が可能な銀河系やアンドロメダ銀河などでは、中心に極めて近い部分において、回転速度は中心に向かって逆にケプラー運動のように増加することが知られており、中心部に大質量のブラックホールがあることの証拠とされる。

2023年09月25日更新

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    銀河系(天の川銀河)の回転曲線。国立天文台VERAプロジェクト。
    (クレジット:国立天文台)。
    http://veraserver.mtk.nao.ac.jp/hilight/2015_chibueze.html
    * 分光観測から銀河の回転曲線を求める手続の解説図(作成 岡村定矩)
    「赤方偏移」の項の解説も参照。
    *光学分光観測で得られた銀河の回転曲線。左が銀河の写真、中央が電離ガスの輝線 スペクトル、右が回転曲線。
    本間希樹「銀河の運動」、シリーズ現代の天文学第4巻、谷口・岡村・祖父江編『銀河I』第2版 2.1節 図2.1(日本評論社)
    (原図はRubin 1983, Science, 220, 1339)
    アンドロメダ銀河の回転曲線(上)と平坦な回転曲線がダークマターの存在する証拠になることの説明(下;岡村定矩)。回転速度がほぼ一定となる範囲で、それより内側に含まれる質量M(r)は半径rに比例するが、光の強度(=光る物質の量)も中性水素ガスの量も半径rとともに減少するので、見えない物質が存在することが分かる。