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火星

小

よみ方

かせい

英 語

Mars

説 明

質量6.41 x1023 ㎏、赤道半径3396 kmはそれぞれ地球の約0.107倍、0.532倍である。密度は3930 ㎏m-3で、地球型惑星の中では最も低い。火星の会合周期は約780日(2年と2ヵ月)なので、この間隔で地球に接近する。軌道長半径は1.524天文単位であるが、軌道離心率が大きい(0.0934)ため、火星が接近したときの地球からの距離は大きく変わる。火星の近日点付近で会合するときを大接近と呼ぶ。

2003年8月の大接近は約60,000年ぶりのもので、地球からの距離は5,576万km(0.37天文単位)まで近づいた。それでも火星の視直径は25.13秒で月の大きさの75分の1、木星よりも小さいものであった。直近の大接近は2018年7月31日で、相対距離は5,759万km(0.38天文単位)、視直径は24秒を超えた。今後の接近については国立天文台の以下のサイトに記載がある。                    https://www.nao.ac.jp/astro/feature/mars2018/next.html

ほかの地球型惑星と同じく、火星は、金属の中心核、岩石質のマントル、地殻という成層構造を内部にもつ。火星の地殻は基本的には地球の海洋底と同じ玄武岩が主成分である。現在の火星でも火山活動は継続していると考えられるが、プレートテクトニクスはなく、火山活動は弱い。

1971年にアメリカ航空宇宙局(NASA)が打ち上げた火星探査機マリナー9号(マリナー計画参照)は1974-75年にかけて火星のほぼ全域の表面画像を撮影した。その結果、火星表面の詳細が明らかになった。火星表面は、標高が高く、地殻が厚く、衝突クレーターに覆われて年代が古い南半球と、標高が低くクレーター密度が低く年代が新しい北半球に分かれている。火山の分布も赤道域から北半球に多い。とくに赤道付近にはタルシス台地と呼ばれる巨大な溶岩台地があり、西端には標高20 kmを越える火山が3つ並び、中央をマリネリス峡谷が東西に走っている。この台地を刻む谷から北方へ、アウトフロウチャンネルと呼ばれる幅数10-100 kmの大洪水地形が何本も走っている。北極平原は、流れ出た水が貯まり、一時的には海が形成されたと考えられている。 南半球の高地にも、バレーネットワークと呼ばれる幅の狭い谷地形が至るところに確認され、火星の過去には全域が温暖な環境下にあり、液体の水が表面で安定に存在したことを示唆する。

火星は過去には生命存在環境にあった。この環境は、厚い二酸化炭素大気(数気圧以上)の温室効果で維持されていたが、この厚い大気は、上空から太陽風のスパッタリングなどによって散逸したと考えられる。近年でも火星大気の流出が、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)によるマーズエキスプレス探査機などで確認されている。NASAのマーズグローバルサーベイヤー探査機の観測から火星の過去には、磁場が存在したことが明らかになっている。磁場の消失が、大気散逸の引き金になったという説がある。

このような火星の特徴から、過去の火星には液体の水とともに生命が存在したかも知れないという期待が高まった。火星に着陸して土壌中に微生物あるいは過去に微生物が存在した形跡を探る生命探査実験をはじめて行ったのはNASAによるバイキング探査機で1976年のことである。さまざまな実験を行ったが、結果的に「火星に生命は存在しない」との結論になった。このため火星探査への関心は薄れてきたが、1996年に南極で発見された火星隕石ALH84001に火星のバクテリアの痕跡を発見したという報告があり、その真偽を廻って大論争が起きた。その結着は現在もついていない。

しかしこの論争により火星探査への関心が再び高まった。NASAのマーズエクスプロレーションローバー計画で2004年に火星表面に着陸したローバーのオポチュニティは、堆積岩と含水鉱物(ジャロサイトという硫酸塩)を発見して、火星表面に長期間液体の水が存在したことを明らかにした。火星は生命存在環境(ハビタブルゾーン)にあったようである。火星大気中には、微量成分としてメタンが存在することが、マーズエキスプレス探査機と地上観測から明らかになっている。これが生命活動と何らかの関係があるのか、非生物的に生産されたものなのかは、まだ解明されていない。

2021年には前年の火星接近時に打ち上げられた火星探査機が次々に火星に到達した。2月にはドバイ首長国が開発したHope探査機が火星の周回軌道に投入された。同じく2月に中国の探査機天問1号が火星周回軌道に入り、5月にローバーが着陸に成功した。8月にはNASAのマーズサイエンスラボラトリー探査機に搭載されたローバーのキュリオシティが火星表面に着陸した。表面を移動しつつ風景を撮影したり、表面を掘って土壌を調査したりして、2024年現在も調査活動を継続中である。NASAの「マーズ2020ミッション」では火星表面探査車パーサビアランスと超小型の軽量ヘリコプター(ドローン)「インジェニュイティ」が火星に送られた。パーサビアランスは2020年7月30日に打ち上げられ、2021年2月19日早朝(日本時間)火星のジェゼロクレーターへ着陸した。このミッションの最大の目的は、火星にかつて微生物などの生命が存在した痕跡を見いだすことである。2021年4月19日にはインジェニュイティが初めての飛行に成功した。地球以外の天体で人類が回転翼機を飛行させたのは初めてのことである。


キュリオシティによる火星表面の360°映像

https://youtu.be/U5nrrnAukwI


キュリオシティによる火星表面の映像:5年の時の推移

https://youtu.be/O0nPFaBU98k


水が豊富にあった40億年前から現在までの火星表面の変化を示す動画(想像図)。NASAの火星探査プロジェクトMAVENのために2013に制作された。(Video credit: NASA/GSFC)

https://www.youtube.com/embed/zm3b3kwzSF4

2024年05月06日更新

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    関連画像

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    火星の姿。中央部が赤道にあるマリネリス峡谷。
    バイキング軌道船の画像を合成。(NASA)
    火星の姿。(NASA)
    地上から見た火星(石垣島天文台)
    キュリオシティによる火星の画像(2015年9月15日)(クレジット NASA)
    https://www.nasa.gov/image-feature/jpl/glimpse-of-bagnold-dunes-edging-mount-sharp