重力レンズ
よみ方
じゅうりょくれんず
英 語
gravitational lensing
説 明
遠くの天体から出た光が、途中にある銀河や銀河団などの重力場によって曲げられる現象。重力場が凸レンズのように働くことから名づけられた。一般相対性理論の帰結の一つであり、重力レンズ方程式で記述される。重力場となる天体をレンズ天体、重力レンズ効果を受ける天体を光源という。
光源が何倍にも増光されたり、細長くゆがんだ像や多重像として観測される場合は、強い重力レンズ効果と呼ばれ、増光やゆがみの程度が小さい場合は弱い重力レンズ効果と呼ばれる。レンズ天体が太陽程度以下の比較的低質量の天体(恒星や惑星)の場合には、光線の曲がり角がごく小さいので、光源の像の歪みを画像としてとらえることはできないが、光が集まることにより増光したように見える。これは重力マイクロレンズと呼ばれている。重力レンズの最初の例は1979年に見つかった。これは銀河がレンズ天体となって光源であるクェーサーの二重像を作っているもので、QSO0957+561A/B と名づけられている。
強い重力レンズ効果は銀河団の中心部で多く見つかっている。光源がレンズ天体の真後ろにある場合は、アインシュタインリングという円環状の像が見られることがある。重力レンズ効果を受けた光源の像を詳細に調べることで、レンズ天体の質量やその分布を知ることができる。これは銀河や銀河団の総質量を測る有力な方法である。また、大きな増光効果を利用して、本来なら観測できないような暗い天体を調べることもできる(ハッブルディープフィールドの「3. もう一つのディープフィールド」を参照)。
弱い重力レンズ効果は宇宙論的歪み(コスミックシアー)とも呼ばれ、銀河団の大局的なダークマターの分布や、宇宙の大規模構造のスケールを越えるような広域にわたるダークマターの分布の研究の重要な手段である。
重力マイクロレンズは、銀河系(天の川銀河)に付随するダークマターがMACHOである可能性を調べるために1990年代はじめに多くの観測プロジェクトで用いられた。その後、太陽系外惑星の発見の有力な手段(重力マイクロレンズ法)ともなっている。
重力レンズを引き起こす銀河団(レンズ天体)が天球上を動くと想定したシミュレーション(厳密な数値シミュレーションではない)
https://www.youtube.com/embed/fO0jO_a9uLA?si=pyTAawh2PZb79RIu"
2023年12月17日更新
この用語の改善に向けてご意見をお寄せください。
受信確認メール以外、個別のお返事は原則いたしませんのでご了解ください。