TESS衛星
よみ方
てすえいせい
英 語
TESS satellite
説 明
トランジット法によって宇宙から太陽系外惑星を探査するための人工衛星。英語名Transiting Exoplanet Survey Satelliteの頭文字をとってTESS(テス)あるいはTESS衛星と呼ばれる。マサチューセッツ工科大学(MIT)のチームが設計し、アメリカ航空宇宙局(NASA)によって2018年4月18日に打ち上げられた。以前の太陽系外探査衛星ケプラー衛星とは軌道が大きく異なっており、比較的小口径ではあるが観測天域も格段に広い。これによって、ケプラー衛星では検出できなかった、近傍の恒星まわりのトランジット惑星を多数検出することが可能になる。
TESSの軌道はかつての観測衛星では採用されたことのなかったP/2と呼ばれる安定な月共鳴軌道(2:1)である。打ち上げ後に軌道修正を重ね、最後に月の重力を利用したスイングバイによって、打ち上げから約60日後に予定の観測軌道に入り、2018年7月25日から観測を開始した。観測軌道の近地点距離は地球半径の約17倍(11万km)、遠地点距離は地球半径の約59倍(38万 km)、周期は13.7日である。近地点に来る13.7日ごとにTESSはそれまでに観測したデータを地球に送信する(図1)。
TESSには24度の視野を持つ同一仕様の4台のカメラが搭載されているが、それらは市販の口径10 cm、口径比F/1.4のレンズを用いている。それら4台が隣接する天域を観測するので、全体としての視野は24度x96度の長方形となる。これをセクターと呼んでいる(図2、図3)。カメラ4の視野中心が常に黄道の極(黄極)を向くように配置した13のセクターで、黄極を中心とする天球のほぼ半分がカバーされる。南北両方の黄極に対して同じ設定がされているので、2年間の観測で全天の約85%が26のセクターでカバーされる。最初の1年間は南天を観測し、次の1年で北天を観測する。
南北黄極の近く(連続観測域:CVZ)は常に観測されているので、観測時間は351日になるが、黄緯が低くなると観測時間は少なくなる。TESSのCVZは打ち上げが予定されているジェイムズウエッブ宇宙望遠鏡(JWST)のCVZを含んでいる(図4)。一つのセクターには約15,000個のターゲット星が含まれており、その明るさは2分間隔で測定され、視野全体の画像は30分ごとに記録される。
TESSの観測の基礎となるのは天体の既存の観測データをまとめたTESSインプットカタログ(TIC)である。定期的に更新されているが、2019年5月に更新された最新の(多分最終の)TIC-8には星と広がりを持つ天体約15億個の、さまざまなバンドでの等級が記録されている。このTICの中からTESSのトランジット観測に適していると思われるターゲットが選ばれる。太陽半径の5倍以下と推定される13等級より明るい星と、低温度主系列星のカタログにあるものを含むターゲット候補リスト(Candidate Target List: CTL)は約950万星を含んでいる(図5)。
2020年7月5日には予定されていた2年間の主ミッションが完了した。主ミッションでは26のセクターが観測され、公表された太陽系外惑星の候補(TOI: TESS Object of Interest)は2000個を超えている。TESS衛星は引き続き27ヶ月間の延長ミッションに入った。
ホームページ
NASA: https://exoplanets.nasa.gov/tess/
MIT: https://tess.mit.edu/
TESS衛星の発見した惑星のカタログと論文:https://tess.mit.edu/publications/
TESS衛星の解説動画(英語)
https://www.youtube.com/embed/mpViVEO-ymc?si=lpxDLc3JQXAw2vAx
TESSの主ミッションの成果(英語)
https://www.youtube.com/embed/uOxuTLPAlzI?si=zHbX2WldkE9bYuEa
2023年11月07日更新
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