自発的対称性の破れ
よみ方
じはつてきたいしょうせいのやぶれ
英 語
spontaneous symmetry breaking
説 明
理論自体はある対称性を持っているが、実際に実現する状態はその対称性が保たれていない状態になることを自発的対称性の破れという。これを直観的に理解するには図のようなワイン瓶の底にぱちんこ玉を置くことを考えると良い。瓶は円い筒型なのでどの方向から見ても同じ形に見え、回転対称性を持つ。
底にぱちんこ玉を落としたとき、もし図(a)のように盛り上がった底の中心にぴたりと命中してそこに止まったとしたら、やはりどの方向から見てもぱちんこ玉は同じ場所に見え、回転対称性の保たれた状態が実現する。しかし、実際にはそうしたことは起こらず、底の中心は盛り上がっていて不安定なため、図(b)のように端の方に落ちる。こうしてぱちんこ玉が瓶の隅に落ちた後で、瓶の周りをぐるっと回ると、ぱちんこ玉が右に見えたり、奥に見えたり、左に見えたりする。これが対称性の破れた状態である。ぱちんこ玉を真ん中にそっと置こうと思っても勝手に滑り落ちてしまうので、これを自発的対称性の破れ、というのである。図(a)の状態よりも図(b)の状態の方がぱちんこ玉のエネルギーが低く、より安定な状態にあるから、ワインの瓶の中ではこのようなことが起こる。基礎物理学でも事情は同じで、ワインの瓶はヒッグス場のポテンシャル、パチンコ玉の位置は場の値を表すと考える。こうしてヒッグス場が値を持つことによって、物質場などに質量が与えられるのである。真空の相転移も参照。
2018年09月17日更新
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