シュミット望遠鏡
よみ方
しゅみっとぼうえんきょう
英 語
Schmidt telescope
説 明
球面鏡を主鏡とし、その曲率中心においた非球面の補正板によって広視野撮像を可能とした望遠鏡。シュミットカメラと呼ぶこともある。明るい口径比と数度角にわたる視野を持ち、主にサーベイ観測のために使用される。ドイツの光学技術者シュミット(B. Schmidt)によって1931年に発明された。
球面鏡は曲率中心に対して完全に対称であるため、曲率中心を通る光は球面鏡によって入射角度によらず同じように結像される。よって、曲率中心の位置に入射瞳(入射絞り)を置くと、入射角度によらず一様に結像する光学系を作ることができる。対称性により、このような光学系には、原理的にコマ収差や非点収差がない。言い換えれば非常に広い視野を持つ光学系が実現できることになる。しかし、球面鏡には球面収差があり、良像を得ようとすれば入射瞳を非常に小さく絞らなければならない。シュミットは、球面鏡の曲率中心に、中央部が凸レンズ、周辺部が凹レンズとなっている薄い補正板を置いて、焦点面で球面収差を除去することのできる望遠鏡を考案した。これがシュミット望遠鏡である。補正板は非球面板で、その曲面はおおよそ中心からの距離に対する4次式で表せる。ただし、より正確には偶数次項の高次多項式となる。シュミット望遠鏡は非常に広い視野を持つが、焦点面が球面となるため、検出器をその球面に沿うように配置するか、写野平坦化レンズを併用しなければならない。
1948年に完成したパロマー天文台のパロマーシュミット望遠鏡は、補正板口径122cmで14インチ(35.6cm)角の写真乾板で6.6度四方の空をカバーした。翌年の1949年から56年にかけて、アメリカ地理学協会の出資によってパロマー天文台から見える北天の全天サーベイ(パロマー天文台スカイサーベイ)を行った。その後、1960年にドイツのタウテンブルグのカール・シュバルツシルド天文台に口径134cmの望遠鏡ができ、シュミット望遠鏡の機能も備えた。その後1973年には南天のサーベイを目的に補正板口径122cmのUKシュミット望遠鏡と100cmのESOシュミット望遠鏡ができた。また1974年には木曽観測所に口径105cmのシュミット望遠鏡ができた。2009年に完成した中国のLAMOSTは伝統的なシュミット望遠鏡ではないが、補正板を反射鏡にした一種のシュミット望遠鏡と言える。
2024年01月17日更新
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