マルチメッセンジャー天文学
よみ方
まるちめっせんじゃーてんもんがく
英 語
multi-messenger astronomy
説 明
天体現象によって発生する電磁波、宇宙線やニュートリノなどの粒子および重力波、を情報を運ぶ運び手(メッセンジャー)と見立てて、複数のメッセンジャーを用いて天体現象を総合的に解明する天文学のこと。
宇宙から届く電磁波は、ガンマ線から、X線、紫外線、可視光、赤外線を経て電波まで広い波長(エネルギー)範囲に広がっており、それぞれの波長帯では天体現象の異なる側面が見える。このため電磁波においては、その全ての波長帯による観測から天体現象を多面的に解明する多波長天文学という言葉が使われていた。
宇宙から届く粒子である宇宙線は1911年にヘスによって発見された。また1970年代にはデイビスにより太陽から届くニュートリノの観測が始まった。さらに小柴昌俊らのチームによって1987年に、大マゼラン雲で発生した超新星爆発(SN1987A)で発生したニュートリノがカミオカンデで検出されニュートリノ天文学が開かれた。
マルチメッセンジャー天文学が大きく脚光を浴びたのは、2015年9月14日にアメリカの重力波観測装置LIGOによって初めて二つのブラックホールの合体による重力波が観測されたことによる。電磁波と粒子に続いて、宇宙を観測する新しい目(メッセンジャー)を人類が手にしたからである。しかし引き続き検出されたものを含め最初の4つの重力波源はいずれもブラックホール連星の合体で、重力波以外には何も検出されなかった。ところが、2017年8月17日に検出された5例目の重力波は、40メガパーセク(40 Mpc=1.3億光年)の距離にある銀河の中で起きた中性子星同士の連星の合体によるもので、重力波の検出後にキロノバと呼ばれる爆発現象が電磁波の全ての波長で観測された。これから、中性子星同士の合体で、r過程により金、プラチナ、ウランなどの鉄より重い元素が作られていることが確認されるなど、マルチメッセンジャー天文学の画期的な成果となった。
2018年03月08日更新
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