周波数スイッチ
よみ方
しゅうはすうすいっち
英 語
frequency switching
説 明
スイッチング観測の1つで、電波輝線観測でよく用いられる。他のスイッチング観測が天球上の位置の違いを用いるのに対して、周波数方向での違いを用いる。アンテナは目的天体の観測点(ON点)に向けたまま、分光器の帯域幅内に収まる2つの異なる周波数での観測を行い、両者の差をデータとする。観測周波数の切替は、ヘテロダイン受信機の場合、局部発振器の発振周波数を変えることで実現し、分光器の同じチャンネルに対応する受信信号周波数を一定値だけずらす。スペクトル線(輝線や吸収線)はドップラー効果による広がりを考えても、比較的狭い周波数範囲でのみ信号を出すと考えて良いので、切り替え周波数が大きければ、分光器からの出力の差は原理的にはスペクトル線によるもののみとなる。そこで、分光器出力を周波数範囲で二分すれば、それぞれの範囲でスペクトル線を検出できる。ただし、引き算側の出力は強度の正負が逆転して記録されているので、そちらの出力は分割後に強度の符号を反転する。これらを、測定時の周波数設定の違いを考慮して平均化したものを周波数スイッチの出力とする。
他のスイッチング観測に比べて、アンテナは常に天体からの信号を測定し続けているため観測の時間効率を高くできるほか、電気回路のみで切替ができるため高速切替が容易である。ただし、周波数設定が変わると受信システムの特性が大きく変動することがあり、多くの場合、引き算の後にも広い周波数範囲にわたって連続的に変化する成分が残ってしまう。スペクトル線が狭い周波数範囲でしか見られない場合には、これを周波数方向での変動の違いで分離できるが、幅の広いスペクトル線の観測は困難である。原理から容易にわかるように輝線でも吸収線でも利用できるが、連続波の測定には利用できない。
2018年03月09日更新
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