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浮遊惑星

 

よみ方

ふゆうわくせい

英 語

free-floating planet

説 明

通常の太陽系外惑星とは異なり、恒星のまわりを周回しておらず孤立して存在する、質量が約13木星質量以下の(重水素の核融合が起きない)天体。自由浮遊惑星あるいは、質量に基づく定義から惑星質量天体と呼ばれることもある。英語ではfree-floating planet のほかに、planetary-mass object、rogue planet、interstellar planet などさまざまな呼び方がある。
浮遊惑星(惑星質量天体)の検出では、近くに明るい恒星がないため、高コントラスト観測よりも高感度観測が重要になる。また、低温度天体のため赤外線における探査が有効である。
最初の浮遊惑星は大朝たち(1999)によって、カメレオン座にある星形成領域の探査観測から発見された。撮像観測によって木星質量の数倍から13倍の天体が複数見つかり、その後、オリオン座、ペルセウス座、S106など様々な星形成領域で続々と報告された。これらは生まれたばかりの天体であるが、WISE衛星などの大規模近赤外探査観測から、太陽近傍において、太陽程度の年齢の天体も多数見つかってきており、太陽から近い星のリストは年々更新されている。現在では候補天体を含むと1000以上にのぼる。さらに、撮像観測だけでは天体の色を考慮しても背景銀河などの混入が避けられないことも指摘されており、候補天体の分光観測固有運動の測定なども重要である。すばる望遠鏡などを用いた分光観測では約6木星質量の浮遊惑星も確認されている。
一方、撮像観測とは独立に、重力マイクロレンズ法によっても浮遊天体の存在が示唆されている。重力マイクロレンズ現象とは、ある星(ソース星)の前を別の星(レンズ星)が横切ると、レンズ星の重力によってソース星からの光は曲げられてレンズの様に集光され、ピーク状の増光現象が観測されることである。増光期間はレンズ天体の質量の平方根に比例し、普通の星で約20日、木星質量では約1日になる。住たち(2011)は銀河中心方向の観測から、増光期間が2日以下の増光現象を10例検出し、それらが木星質量程度の浮遊惑星であることを示唆した。統計的には、銀河系天の川銀河)全体では少なくとも恒星の数と同程度数の浮遊惑星が存在する可能性も示している。
浮遊惑星の成因としては、通常の恒星や褐色矮星のように自己重力で収縮して形成される説と、恒星のまわりで惑星として形成され、それらが惑星系から飛び出したとする放出説に大別される。浮遊惑星として最初に発見された天体であるカメレオン座のOTS44は、アルマ望遠鏡ハーシェル宇宙天文台により原始惑星系円盤が付随している証拠も得られている。つまり、前者の、恒星のミニチュア版として誕生する説を支持するものである。最近、フランス・日本などのチームにより、大規模な撮像観測と固有運動を組み合わせて、さそり座の星形成領域で約100個の浮遊惑星が直接撮像により発見され、後者の放出説の可能性も提唱されている。

 

2023年11月20日更新

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    軌道長半径と質量の平面上での太陽系外惑星の分布図(2020年9月時点のデータ)とさまざまな太陽系外惑星の名称。浮遊惑星はこの図の右上にはみ出した部分に位置する。
    田村元秀「第二の地球を求めて」NAOJニュースNo340より転載
    https://www.nao.ac.jp/contents/naoj-news/data/nao_news_0340.pdf