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フラッシュスペクトル

 

よみ方

ふらっしゅすぺくとる

英 語

flash spectrum

説 明

皆既日食の際に皆既開始の直前と皆既終了の直後に短時間だけ光球より上空にある彩層が輝くが、このときに得られる分光スペクトルのこと。月により光球が隠されていくと、連続光成分と吸収線からなる光球起源のスペクトルが次第に弱まっていき、より上空にあって輝線放射をする彩層からの放射が皆既前後で顕著になるためにスペクトルは彩層起源の輝線スペクトルへと変化していく。さらに厚みの薄い彩層が月に隠されていくと、大多数の輝線は数秒で見えなくなるが、彩層の構造は3000 kmから10000 km程度まで延びているものがあるため、水素のH𝛂線(636.3 nm)やHβ線(486.1 nm)、またヘリウムのD3線(587.6 nm)などの強い輝線は数十秒間見えている。

2018年08月30日更新

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    1980年2月16日のケニアでの皆既日食直前に取得されたフラッシュスペクトル(国立天文台提供)。
    https://solarwww.mtk.nao.ac.jp/jp/image/eclipse19800216.jpgから