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宇宙の再電離

 

よみ方

うちゅうのさいでんり

英 語

cosmic reionization

説 明

宇宙で最初の天体が誕生した後、天体が発する紫外線によって宇宙全体に広がっていた中性水素ガス(HⅠガス)が光電離されること。
ビッグバン直後の宇宙は超高温・高密度で、主に水素からなるガスは電離した状態(水素の原子核である陽子電子がバラバラの状態で飛び回っているプラズマ)にあった(この状態の電子は自由電子と呼ばれる)。膨張につれて宇宙の温度と密度が下がった約38万年後(赤方偏移約1090)頃に、自由電子が陽子に捉えられて結合し、電離ガスはすべて中性水素ガスとなった。これが宇宙の晴れ上がりである。その後しばらく、天体がまだ存在しない宇宙の暗黒時代が続くが、初代星(始原星ともいう)の誕生に始まる星と銀河(初代天体)の形成過程が起き(宇宙の夜明けを参照)、それら天体の放つ紫外線により宇宙空間のガスは再び電離された。宇宙空間が中性水素ガス100%の状態から現在の0%に移行する宇宙の再電離が、いつから始まりどのように進みいつ完了したかはいまだ完全な理解には到っていない。それは、宇宙の初代天体の種類および形成時期とその周囲の銀河間物質の物理状態に依存した複雑なプロセスだからである。
宇宙の再電離は赤方偏移20-10(宇宙年齢約2-5億年)の間頃に始まり、赤方偏移6頃(宇宙年齢9億年頃)までには完了したと考えられている。そのプロセスに関しては、早い再電離と遅い再電離という二つの考え方がある(図参照)。早い再電離は宇宙年齢4億年未満から電離がはじまり、少しずつ電離度が進み中性水素ガスの割合が減少して宇宙年齢10億年頃までに再電離が完了する。一方、遅い再電離では、宇宙年齢6億年頃に再電離がはじまり、電離度が急速に増加して9億年頃までに再電離が完了する。ジェイムズウエッブ宇宙望遠鏡すばる望遠鏡による最新の観測からは、両者の中間的なプロセスであったことが示唆されている。

2024年03月06日更新

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    *宇宙史における宇宙の暗黒時代とその終焉
    梅村・千葉・西「銀河形成論」、シリーズ現代の天文学第3巻、二間瀬・池内・千葉編『宇宙論II』 5章 図5.6 (日本評論社)
    宇宙の進化と再電離期のイメージ図。
    以下のアルマ望遠鏡のサイトにある図に日本語ラベルを追記(岡村定矩)
    https://alma-telescope.jp/assets/uploads/sites/alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/files/editor/20160617_fig1e.jpg 
    宇宙における中性水素ガスの割合を宇宙年齢の関数として表した図。水色とオレンジ色の曲線が早い再電離と遅い再電離モデルの予想。赤の四角がジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡、ピンクの四角はすばる望遠鏡によるデータ(いずれも2023年)。黒色はそれ以前のデータ。
    出典:大内正己「ジェイムズ・ウエッブ望遠鏡の最新観測で迫る宇宙の初期」 NAOJ News No.341
    https://www.nao.ac.jp/contents/naoj-news/data/nao_news_0341.pdf