タリー-フィッシャー関係
よみ方
たりーふぃっしゃーかんけい
英 語
Tully-Fisher relation
説 明
渦巻銀河の光度 L と回転速度 V の間に見られる L ∝ V n という形の相関関係で、銀河のスケーリング則の1つ。渦巻銀河に対するもので、1977年にタリー(B.Tully)とフィッシャー(J.Fisher)によって発見された。n の値は光度を定義するバンドによって異なるが、概ね n=3-4 の範囲にある。
回転速度の指標には中性水素原子の出す21cm線の線幅(ドップラー幅 Δv)が使われることが多い。これは回転速度のほぼ2倍に当たる。光度Lは絶対等級で表すのが一般的である。このため、タリー-フィッシャー関係を得るには電波望遠鏡による観測と光学赤外線望遠鏡による観測を組み合わせる必要がある(概念図参照)。電波望遠鏡では中性水素の21cm輝線で渦巻銀河を観測する。銀河全体が電波望遠鏡の視野(ビーム幅)に入る場合を考える。この場合に得られる電波信号のスペクトルは、典型的には上底がへこんだ台形のような形になる。これは銀河内の中性水素の分布状態と銀河回転の効果による。台形の幅は回転速度のドップラー効果から生じている。ただし、観測された幅は回転速度の視線方向成分によるものであるので、回転速度を求めるには、視線に対する銀河円盤の傾きの効果を補正する必要がある。一方、光学赤外線望遠鏡ではある特定のバンドで渦巻銀河の撮像観測を行う。得られた画像から表面測光によって銀河の全光度 L を求め M = 定数-2.5log L の式により絶対等級に変換する。ここで、銀河の内部吸収の効果を補正しておく。こうして求めた絶対等級を縦軸に、回転速度を(対数目盛で)横軸にとってデータをプロットするとタリー-フィッシャー関係が得られる。
タリー-フィッシャー関係は渦巻銀河の距離指標関係式としても用いられ、宇宙の距離はしごで重要な位置を占める。タリーとフィッシャーは光度の測定にBバンドを用いたが、後にアーロンソンらは、近赤外のHバンドを使うとばらつきが少なくなることを見い出して、近赤外タリー-フィッシャー関係を使って銀河の大規模な特異運動の研究を進めた。
2023年05月09日更新
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