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宇宙のスケール因子

 

よみ方

うちゅうのすけーるいんし

英 語

scale factor of the universe

説 明

宇宙の相対的大きさの時間的変化を表す関数。宇宙のスケールファクターとも呼ばれる。a(t) で表し、現在 (t=t0) での値を1に規格化することが多い。スケール因子は宇宙全体の時間進化を記述するための基本的な量である。

膨張宇宙において、十分離れた距離にある任意に選んだ2つの銀河の距離 r(t) はスケール因子に比例して大きくなる。すなわち、r(t)=a(t)χ と表される(χ固有距離である)。ここで r˙(t)=a˙(t)χ=v(t) は、観測的には銀河の後退速度に相当する。ここで変数記号の上のドットは時間微分を示す(r˙(t)=dr(t)/dt など)。ハッブル定数とスケール因子の関係は次のようになる。

v(t)r(t)=a˙(t)a(t)H(t)

ハッブルパラメータと呼ばれるが、その現在における値 H(t=t0)H0 がハッブル定数である(ハッブル-ルメートルの法則 v=H0r を参照)。

遠方銀河からの光は宇宙膨張によって波長が伸び、スペクトル赤方偏移して見える。波長の伸びは、光が出発した時点におけるスケール因子の逆数に比例する。このため、光が出発した時刻におけるスケール因子の値は観測可能な量である。また、角径距離光度距離など、宇宙論的に重要な観測量はスケール因子の時間変化により定まる。

2024年01月21日更新

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    * 宇宙のスケール因子の概念図。(岡村定矩)