はやぶさ探査機
よみ方
はやぶさたんさき
英 語
Hayabusa Spacecraft
説 明
2003年に打ち上げられて、2005年にアポログループの地球接近小惑星(25143)イトカワを探査して表面のサンプルを採取、2010年に地球への帰還に成功した、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機である。旧名はMUSES-Cで、宇宙科学研究所(ISAS)の工学試験衛星として、イオンエンジンの実証や惑星探査技術の確立を目的として打ち上げられた。重力の弱い小天体に着地して、サンプルを回収して地球に持ち帰ることに成功したのは、世界初である。
地上観測から、イトカワは500 mほどの細長い形状をしたスペクトル型はS型の小惑星であると推測されていた。実際のイトカワは、大小2つの塊が接合したような形状をしていた。大小の塊の間に存在する滑らかな地域(ミューゼスの海)は、数cm程度の小石状の物質で覆われていて、着地およびサンプル採取地点に選ばれた。
「はやぶさ」のサンプル採取手法は、弾丸を衝突させて小惑星表面から巻き上がる放出物をホーンで集めてサンプルカプセルに導入するシステムである。着地時に弾丸が発射されなかったことがわかり、その後も、燃料漏れ、通信途絶、イオンエンジンの故障などがあり、サンプルの帰還は危ぶまれた。しかし、これらの困難を克服して、2010年6月13日に大気圏に再突入、本体は多数の破片となり流星のように輝いて燃え尽きたが、切り離されたサンプルカプセルは西オーストラリアのウーメラ地区に無事着地した。小惑星表面に着陸してのサンプルリターンに世界で初めて成功した。サンプルカプセルの中には1000個以上の微粒子が捕獲されており、初期分析から、小惑星起源であり、LL型コンドライトに近い組成を持つことが判明した。これはイトカワの分光観測の結果と一致した。また、地球と異なる酸素同位体比や、宇宙風化作用の証拠である鉄ナノ微粒子も発見されている。
はやぶさの観察した小惑星イトカワの表面はこれまで探査機が訪れたガスプラ、イダ、エロスといった大きな小惑星とは異なり、表面は細かいレゴリス粒子に覆われておらず、岩塊が積み重なっていた。最大の岩塊は50 mほどの大きさである。また、質量と体積から求まった密度は 1900 kg m-3 で、40%の空隙率が求められ、内部に岩塊間の空間が分布していることを示す。これらは、衝突破片が重力で集積したというラブルパイルモデルの強い証拠である。
「はやぶさ」の成功を受けて、後継機「はやぶさ2探査機」の計画が開始された。2014年12月に打ち上げられ、生命材料物質である有機物が存在すると考えられるC型小惑星(162173)1999JU3「リュウグウ」に2018年6月に到達した。
2023年05月08日更新
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