トムソン散乱
よみ方
とむそんさんらん
英 語
Thomson scattering
説 明
非相対論的な自由荷電粒子による電磁波の弾性散乱のうち、可視光などの低周波の電磁波の散乱で、散乱前後で波長の変化を伴わないもの。
これに対して波長の変化を伴うX線やガンマ線など短波長の電磁波の散乱をコンプトン散乱という。電子に対するトムソン散乱の断面積は次のようになる。
$$\sigma_T=\frac{8\pi}{3} \left( \frac{\alpha \hbar}{m_{\rm e} c}\right) \approx 6.65 \times 10^{-25}\,\, [{\rm cm}^2]$$
ここで $\alpha=e^2/(4\pi\varepsilon_0\hbar c)$ は微細構造定数。$\hbar$ は $h$ をプランク定数として $\hbar=h/2\pi$ 、$m_{\rm e}$ は電子の質量、$c$ は光速度、$\varepsilon_0$ は真空の誘電率。
トムソン散乱において入射電磁波の電場成分のうち散乱方向の成分は完全に消え、散乱方向に直交する成分だけが残るため、散乱波は直線偏光となる。このメカニズムは宇宙マイクロ波背景放射の偏光をつくる原因となる。
2023年05月12日更新
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