ガイア衛星
よみ方
がいあえいせい
英 語
Gaia satellite
説 明
天の川銀河(銀河系)の詳細な三次元地図を作ることを目的としてヨーロッパ宇宙機関が2013年12月に打ち上げたアストロメトリ専用の衛星。ヒッパルコス衛星の後継機である。太陽と地球のラグランジュ点 L2 の周りで観測を行う。20等級までの約10億個以上(天の川銀河にある星の約1%)の恒星の位置と固有運動と明るさ(分光測光)、17等級までの1億個以上の恒星の視線速度の測定を目指した。
2016年9月に最初の約1年間分の観測に基づくデータを公開した(Gaia-DR1)。11億個の天体が観測され200万個の星に対して位置、年周視差、固有運動が求められた。その後も観測は順調に進み、2018年4月(Gaia-DR2)と2020年12月(Gaia-EDR3)にも段階的にデータ公開が行われた。ヒッパルコス衛星の観測と比べて星の個数、精度とも圧倒的に向上した結果が得られた。これらのデータからすでに多数の画期的な科学的成果が挙がったこともあり、当初2019年末までだった観測予定が延長された。
2022年6月に3回目のデータ公開(Gaia-DR3)が行われた。観測天体数は18億個となり、観測精度はより向上した。具体的には、約14億7000万個の星の位置、年周視差、固有運動が測定された。その精度は以下のようになっている。単位のmasはミリ秒角(milliarcsecond)で1 mas=0."001 である。またGはガイア衛星の測光システムによる等級である。
星の位置:0.01-0.02 mas for G<15, 0.05 mas at G=17, 0.4 mas at G=20,
and 1.0 mas at G=21 mag
年周視差:0.02-0.03 mas for G<15, 0.07 mas at G=17, 0.5 mas at G=20,
and 1.3 mas at G=21 mag
固有運動:0.02-0.03 mas/yr for G<15, 0.07 mas/yr at G=17, 0.5 mas/yr at G=20,
and 1.4 mas/yr at G=21 mag.
ヒッパルコス衛星の精度が1ミリ秒角程度であったので、2桁近い精度の向上が実現した。距離決定精度が10%以下の星はヒッパルコス衛星では2万個程度であったが、ガイア衛星では1億個を超える。2020年代後半に最終カタログが公開予定である。
ガイア衛星は国際天球基準座標系(ICRF)(国際天文準拠系を参照)を構成するような銀河系外の恒星状天体もとらえる能力を持っており、これらを通じて座標系をICRFに揃えることができる。Gaia-EDR3から銀河系外天体のみで構成される星表(座標系)がGaia-CRF3であり、2021年のIAU勧告により、2022年からはGaia-CRF3が光学的に(可視光で)国際天文準拠系を実現するカタログ(恒星のカタログではないが星表と呼ぶこともある)と位置付けられた。
ガイア衛星のホームページ: https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/home
Gaia-DR2のサイト: https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/data-release-2
Gaia-EDR3のサイト: https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/early-data-release-3
Gaia-DR3のサイト: https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/data-release-3
Gaia-DR3のさまざまなデータを可視化したムービー。(Video credit: ESA)
https://www.youtube.com/embed/zm3b3kwzSF4
Gaia-EDR3データに基づく4万星の160万年間の固有運動。線状の弧の長さは8万年間の動きを示している。(Video credit: ESA)
https://www.youtube.com/embed/Jqaa8P2SE7w
2022年12月27日更新
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