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おとめ座銀河団への落ち込み運動

 

よみ方

おとめざぎんがだんへのおちこみうんどう

英 語

Virgo infall motion

説 明

局所超銀河団の銀河がおとめ座銀河団の重力に引かれて落ち込んでいる運動のこと。多数の銀河の距離と視線速度後退速度)を測定し、視線速度がハッブル流からどれくらいずれているかを調べる過程で1980年頃に発見された。天の川銀河銀河系)の場所での落ち込み速度は200-300 km/sと推定されている。銀河系も局所銀河群の銀河とともにおとめ座銀河団に引かれて落ち込んでいるが、両者の距離は宇宙が膨張している(ハッブル流がある)ので広がっている。落ち込み運動の影響は、おとめ座銀河団の周辺にある銀河で、後退速度がハッブル流より遅くなる(宇宙の膨張速度が遅くなっているように見える)効果として現れる(図1, 2, 3)。さらに1986年には、宇宙マイクロ波背景放射に対する局所銀河群の運動速度は、おとめ座銀河団への落ち込み運動と、うみへびーケンタウルス座銀河団が、局所超銀河団を引き寄せている速度の合成で説明されるとして(図4)、局所超銀河団より大規模な領域で銀河が揃った運動をしていることが指摘され、それ以後超銀河団より大きなスケールでの大規模な銀河の特異運動(bulk motionあるいはstreaming motionと呼ばれる)が活発に研究されるようになった。ラニアケア超銀河団も参照。

2020年04月17日更新

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    * 図1 おとめ座銀河団への落ち込み運動の影響。おとめ座銀河団がなければ、後退速度の等しい線は図の波線のように、太陽を中心とする同心円となる。おとめ座銀河団がある場合の等後退速度線は実線のようになる。おとめ座銀河団から20°以内の天域では、一つの後退速度は複数の距離に対応するようになる。
    Tonry and Davis 1981, ApJ, 246, 680にある原図から作成(岡村定矩)。

    * 図2 306個の銀河の後退速度とモデル予測からのずれ(残差ベクトル)を示した図。モデルが概ね観測と合致していることがわかる。
    Aaronson et al. 1982, ApJ, 258, 64にある図から作製(岡村定矩)。
    * 図3 ハッブル宇宙望遠鏡によるデータから赤色巨星分枝先端法で距離を精密に決めた銀河(黒丸)の後退速度と落ち込みモデルの比較。白丸は文献によるデータ。Karachentsev et al. 2014, ApJ, 782:4 (9pp)の原図より作成(岡村定矩)。
    * 図4 局所超銀河団とその周辺の大規模な特異運動を説明した図。
    Aaronson et al. 1986, ApJ, 302, 536 にある原図より作成(岡村定矩)