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スペクトルエネルギー分布

 

よみ方

すぺくとるえねるぎーぶんぷ

英 語

spectral energy distribution(SED)

説 明

スペクトルとほぼ同じ意味であるが、波長あるいは振動数(周波数)の関数としてグラフで表現される電磁波の強度分布に注目する場合に使われる用語。研究分野ではSEDと省略されることが多い。
多数の星からなる銀河の紫外-可視光-近赤外域のSEDからは、その銀河を構成する星の種類、すなわちその銀河の星生成史を推定できる。現在星生成活動が活発に行われている不規則銀河(SmやIm型)のSEDでは紫外線波長域の連続光の強度が強く、電離ガスからの輝線が見られる。一方、星生成活動が起きていたのはずいぶん昔で現在はほとんど星を作っていない楕円銀河(E型)のSEDでは、紫外域の連続光は弱く、4000Åブレイクがはっきりと見え、年齢の古い晩期型星からの放射が強くなり、赤から近赤外線波長域にかけての連続光が強くなる。4000Åブレイクの強さは、主要な星生成活動が止まってからの経過時間の指標となる。
可視光波長域だけでなく、電波から高エネルギーガンマ線まで広い波長域をカバーするSEDからは、その天体で起きているさまざまな物理現象を理解するための重要な手がかりが得られる。

2020年01月06日更新

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    スペクトルエネルギー分布
    *さまざまな形態の銀河のスペクトルエネルギー分布。
    山田 亨「銀河を構成する星の種族」、シリーズ現代の天文学第4巻、谷口・岡村・祖父江編『銀河I』第2版 1.4節 図1.18(日本評論社)
    (原図は Kennicut 1992, ApJ, 338, 310)
    電波から高エネルギーガンマ線にまで渡るかに星雲のスペクトルエネルギー分布。縦軸は放射強度f_νに周波数νをかけたもの(単位はW m^{-2})の対数、横軸は電磁波のエネルギーを電子ボルト(eV)単位で表した値の対数。実線や破線は理論モデルの予測を表す。二つの大きな山の左(低エネルギー側)は高エネルギー電子によるシンクロトロン放射、右はその電子による逆コンプトン散乱による。
    原図の出典
    F.A. Aharonian, Proceedings of the 22nd Texas Symposium on Relativistic Astrophysics at Stanford University, Dec. 13-17, 2004