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電磁流体力学

 

よみ方

でんじりゅうたいりきがく

英 語

magnetohydrodynamics(MHD)

説 明

プラズマなど電気を伝えやすい流体を取り扱う流体力学。磁気流体力学と呼ばれることもある。また、MagnetoHydroDynamicsを略してMHDとも呼ばれる。
プラズマのような電離したガスの中では電流が流れ電気が伝わることができる。このような流体が磁場の中を運動すると起電力が生じる。するとその起電力によって生じる電流と磁場との相互作用によって流体に力(ローレンツ力)が働く。このため、電導性のよい流体の運動では電気的に中性の流体の運動とは違った性質が表れる。例えば、電導性のよい流体は磁力線を横切る方向には動きにくく、磁力線の方向には動きやすくなったり、中性の流体には見られない波動(電磁流体波)が発生したりする。
電磁流体力学では、中性の流体を扱う通常の流体力学の運動方程式にローレンツ力を含める必要があるほか、電磁場を記述するマクスウェル方程式も同時に解く必要がある。1942年にアルベーン(H. Alfven)は、この電導性流体を記述する基本方程式を考察し、宇宙プラズマ中の諸現象の理解にローレンツ力を介した動力学やそれを支配する波動が重要であることを見出した。その後、電磁流体力学は宇宙プラズマだけでなく核融合プラズマなど幅広くプラズマ科学の基礎体系として発展してきた。アルベーンはこのような功績により1970年にノーベル物理学賞を受賞している。
磁場の凍結アルベーン波ジャイロ運動も参照。

 

2021年02月04日更新

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